千鶴が粗方読みたいところを読んでしまって、隣を見ると、野々宮はいなかった。 向かいのCDコーナーでCDを出し入れしている。 「すみません。つい……」 声をかけると、振り返ってニコリと微笑む。 「全然平気だよ? 帰る?」 「野々宮先輩の用が終わったなら、帰ります」 「じゃ、帰ろ」 本屋を出ると、雨は既に止んでいた。 「やった。帰り濡れないじゃん」 野々宮は嬉しそうだが、千鶴は嬉しいような残念なような複雑な気分だ。 あの距離感が、意外にも心地良かったりしたのかもしれない。