「それで、今日は何の曲ですか」
野々宮は好きなアーティストの曲を持ち込んだギターで演奏したりしている。
千鶴は全く音楽の知識を持っていないので上手い下手は分からない。
けど、野々宮の演奏する曲はどれも好きだ。
その曲が好き、と言うわけではなくて
野々宮が演奏するから好きなのかもしれないし、
野々宮の好きな曲が千鶴の好みと一致しているのかもしれない。
どっちかなんてどうでもいいくらい、
野々宮の演奏は好きだった。
「それは聴いてからのお楽しみ」
「千鶴が知ってる曲ですか?」
「いや? 知らないよ」
「言い切りましたね」
「絶対、百パー知らないから」
そう言って弾きだした曲は確かに千鶴の知らない曲だった。

