絶対この人はごめんなんて思ってないんだ。
まだ会ってからそんなに日は経ってないが、
千鶴はこの先輩のおおよその性格が分かってきた。
「音は出してもばれないんですか?」
「それは平気
隣の部室、一番騒がしい所だし
向かいは演劇部で発声練習とかしてるし」
俺一人の時はイヤホンで聞いてたしね、
とつけたして笑った顔を見て千鶴はさっきの言葉に訂正を加えた。
この先輩の性格はほんの少し、分かった気がする。
でも、やっぱりよくわからない。
「千鶴いた方が邪魔って聞こえるんですけど、
帰りましょうか?」
「何でそうなるの!
俺が連れてきたのに」
いや、だから聞いてるんですけど
この質問はその先が長くなりそうだったのでやめた。

