(それにしても……)

次から次へと出てくる黒い陰に、これほどまでに長い戦闘をしたことのなかった僕の顔には汗がつたっている。

いくら弱いとはいえ、これだけの量を相手にすれば確実に疲労は溜まっていく。

(これじゃキリがないな……しかたない)

わざと敵のど真ん中に降り立った僕は、広範囲に渡る銃の衝撃で人間の群れを一掃してやった。

爆発音が響き、目の前が爆風によって巻き上げられた砂埃で真っ白になった。

だんだんと見えてきた光景は、破壊された人間の残骸ばかりだった。

よかった……。

「っ!?」

だけど、そんな安堵もつかの間、激しい立ち眩みが僕を襲った。

頭がくらくらして、真っ直ぐ立つこともできない。

どうしたんだよ!

原因を考えてみるけど、思いつくことがまったくない。

そもそも、熱とかなら僕はすぐに治るし、ここまで重度の体調不良になったことはない。

体調管理には特に気をつけているから。

(な、ん―――だ、何も考え、られ、な……い)

がくんと崩れ落ちる体。

頭が正常に動かない。

目の前までぼやけてきた。

五感がどんどん奪われていく。

(動けよ、バカ!)

内心悪態をついてみるけど、体は言うことを聞かない。

意識が遠のく―――。

視界の端に細い体が見えた。

その人は僕のほうに歩いて寄ってくる。

その目はパーカーのフードで見えなかったけど、口は何も言わず引き結ばれていた。

(あぁ……僕が……無力なのが悪いのか……)

そこまで考えて僕の思考と視界は完全にプツリと消えた。