アンジュエールの道標


変にドキドキする胸を押さえながら下へ。

リビングのドアをゆっくり開けると、


「お金、そこに置いとくから」

「……うん」


いつもと同じ風景がそこにあった。

何も変わらない。

違うのは、


「ねぇ、ママ」

「なに?」

「パパは?」


パパが居ないこと。

ママと言葉を交わさないまでも、いつもならパパはコーヒーを飲みながら新聞を読んでるはずなのに。


「……出張よ」


嘘だ。