アンジュエールの道標


パパとママの仲が悪くなり始めたのはいつくらいからだろう?

極々普通の家で、平凡な毎日。

それが壊れ始めたのは私が高校に入ったくらいからだったと思う。

丁度、私が失恋した頃、かな……。


「――浮気だなんてっ!」

「お前だって習い事と言いながら――」


二人、顔を合わせればこんな言い合いをしてた。

一応、気を遣ってなのか私が居る前ではしない。私が部屋に入った後とか、夜遅くにだけ。

あの夜は特に酷くて。


「出て行って! 顔も見たくないっ!!」

「あぁ、出て行くとも! ただし俺が働いた金はきっちり貰うがな!」


聞きたくも無いのに聞こえてくる声。


「そんなの通るわけ無いでしょ?」

「うるさい! お前のほうこそ社交ダンスの講師にいくら貢いだ!?」