もう彼女の姿は見えない。

さっき見えたのは幻だったんじゃないかと思えるほど不思議な時間。

けれど、


「次は君だね」


目の前の彼が薄く笑う。

黄金色の瞳を輝かせて。


「アンタ、一体――」

「君はまだ記憶があるからやりやすい。というか、自分も死んでしまったのに彼女の49日を覚えてるなんて奇跡だよ」


彼の髪が真っ白、いや銀色に輝いていく。


「さあ、君は自分でいけるね」


その台詞に一志は手に持った花束を川に放り投げた。

瞬間、四散していく花。

それは夕日を浴びて煌きながら、まるで降り注ぐ雪のように川の水面に落ちていく。