アンジュエールの道標


『しかし、妾だとしてもこの人の悪意には引きずられてしまう』

「そこかしこで人が死んでるから」


人という生き物は厄介だ。

悪意をふりまき争うせいで周りに住まう我らまで巻き込む。


『妾の神域ですら悪鬼どもが跋扈しておる』

「今、この水を清めたから少しはマシになると思うんだけど」

『もしや、黄金なるものが現れたのか?』


その台詞に永久の顔から笑みが消えた。

そして、ただの猫になり下がっているわしの身体を抱きあげて。

それで察したのだろう。

竜神は重苦しい息を吐いた。