アンジュエールの道標


首を傾げる私に、永久さんはスイッと宙を指差した。

さっきまで黒いものが居た空間を。


「消えたでしょう?」

「……はい」

「だから、もう見つからない」

「……」

「他にもいろんなものが混ざってたし、元には戻せなかったし。可哀想だけど……」


お隣さんは、消えて無くなった、らしい。

そんな事って――。


「この日本で毎年いくつの捜索願が出されてると思う?」

「……」


そんな警察24時みたいなネタなんて知らない。

けど、多分たくさんあるんだろうなって、


「まぁ、こんな消え方はその中でもほんの数%だと思うけどね」


にっこりと微笑む永久さんの顔を見ながらぼんやり考えてた。