檸檬の変革

文也は私の気持ちを知っていた。
私も文也の気持ちを知っていた。

でも、私は素直になれずに文也に言った言葉は気持ちとは正反対の言葉だった。
文也はフッと小さく淋しそうに笑って私の髪をクシャッと触ったのが、文也が私の髪を触り始めたキッカケだった。


『徹。………。アニキ。過去は変えられないよ。千穂子と文也は出逢うべくして出逢ったんだしね。』

徹の肩がピタリと止まった。
ゆっくり私から離れて背中を向けて私に確かめる様に聞いた。

『お前、千穂子とあちき君の事知ってたか?』

私はビクッと体が動いた。そして徹がその事を何処で知ったのか聞くのが怖くて震えた。
徹は私の気配で感じ取ったらしい。
静かに言った。
『俺、まさか親友が千穂子と寝るなんて思わなかったよ。千穂子が誘った。あちきには彼女がいたから、初めは拒んだと思う。なぁ。俺達の仲壊れちゃうのかな……?お前はどう思う?』


私はゆっくりあちき君の部屋の明かりを見た。
きっと今頃文也と千穂子、あちき君で、その事を話しているに違いない。

入って止めたい衝動を必死で抑え込んだ。
コレはあの3人の問題だ。だから徹も外に出て来た。


私は部屋の明かりを見ながら祈るしか出来なかった。
私はなんて無力でちっぽけなんだろう。