檸檬の変革

徹が静かに話し始めた。
『俺、文也と学校一緒じゃん。アイツ結構もてんだよ。でも、アイツ女には見向きもしないし、上手く交わしてたんだよ。そんな時学校のダチが千穂子を紹介したんだよ。』

煙をボンヤリ見ながら徹が話を続けた。

『ソイツ、クラスに目を付けた女が文也の事好きなのを知って、慌てて千穂子を紹介して文也をフリーじゃなくしたんだよ。』

私の知らない話。私の知らない学生の文也の話。

『ダチの紹介だから無碍に出来ないし、別にフリーの文也には何の障害も無かったから付き合ったのが始まりなんだ。』

徹が溜め息をついた。

『さほど時間も経たないうちに千穂子がどんな女か分かってきたんだ。千穂子、その紹介したダチとも寝てたしね。でも、文也はあんな性格だったから見捨てる事はしないし、千穂子も少しずつ変わって来たんだよ。』


私は独り言を話す様に徹の話を遮り口を開いた。

『私と文也に恋愛感情はないよ。私と文也は鏡みたいなモノ。自分から鏡を割るヤツなんていないでしょ。千穂子が心配や淋しい思いをするなんて必要ない。私は文也とは恋愛出来ない。だって鏡だもん。それに私は千穂子がどんな女でも変わらず好きだよ。』


徹は涙を浮かべて私を見ながら言った。