檸檬の変革

私達は車を降りた。
あちき君の家に入ろうとする私を文也が止めた。
『ちょっと待ってて。』

私はキョトンとして
車に寄りかかり煙草に火をつけた。

文也と千穂子はあちき君の家に入っていった。

何を話しているかは分からないけれど、あちき君と徹の声は聞こえた。

私は煙草の煙が立ち上るのを何も考えずただ眺めていた。
煙が何処まで上るか見ていた。

時間が流れる。
車の熱も少しずつ収まって鉄の温度に戻ってきた。
それでも誰も出て来ない。

何本目かの煙草を取り出した時徹が出て来た。

私の隣に来て煙草を取り出した。
私はZippoに火を灯し2人でくわえた煙草に火をつけた。


2人で煙を吸い込み、同時に吐き出した。
長い夜になりそう……。


3人は気配だけ感じさせ、話し声は聞こえなかった。
見上げれば星が遠くで微かに光り、月は綺麗な三日月だった。