檸檬の変革

三人はずっと黙ったままだった。
流れる街の灯りを私はずっと眺めていた。

千穂子が羨ましい。
文也が夜の街を懸命に宛もないのに走り回り、探し回る文也の彼女。
文也は千穂子を愛している。
文也が抱くのは千穂子だけ。
文也が考えるのは千穂子の事だけ。
文也を振り回すのは千穂子だけ。

なのに何故不安になるの?
何故淋しいからって他の人に抱かれるの?
千穂子には文也の優しさが見えないの?

私と文也は恋人じゃない。
私が文也に抱かれる事は生涯無い。
それに文也は恋人以外の人はどんな事になっても抱かない。
それは私が一番知っている。
それに私もそれを望んでいない。

だから千穂子が不安に思う事は無い。
淋しく思うことも無い。


文也と私は鏡みたいなモノ。
私と文也はお互い片割れ同士。
恋愛とは言えないモノ。
だから文也と恋愛が出来る千穂子が羨ましい。


私は文也とは恋愛出来ないもの。


街並みが見慣れた風景になって来た。
車はあちき君の家に着いた。