檸檬の変革

文也が走って来たのに驚いた顔をした千穂子の顔が見えた。そして文也の車に乗っている私を見た千穂子と目が合った。

文也は千穂子の両腕を掴んでビルの間に連れて行った。
声は聞こえない。姿も見えない。

夜の街のざわめき。野卑なネオンが私を孤独に感じさせた。

どの位の時間が流れただろう。

私は2人が戻って来るのをジッと待った。

私の存在が千穂子を不安にさせている。
私の事で千穂子が孤独を感じさせている。

でも、私は千穂子が好き。
文也も好き。
どちらも私には大切な人。

そればかり考えていた。

やがて文也が千穂子の手を取り車に戻ってきた。

私は助手席から出て2人が来るのを待った。
千穂子は目が赤かった。

文也が運転席に乗り込んだ。
私は千穂子の背中を優しく助手席に促した。

私は千穂子の後ろの席に乗り込んだ。


車はネオン街から抜け出す様に走り出した。