檸檬の変革

静かに走り出す車。REBECCAの曲が流れていた。
夜道を車は走っている。
文也が前を向いたまま静かに話し始めた。
『千穂子と喧嘩した。』
私も前を向いて口を開いた。
『何かあったの?』

『アイツ。直ぐ居なくなるんだよ。何処に行ってたのか聞いても答えないし、ダチから千穂子の話が流れてくるんだけれど、良い話じゃなくてね…。』

知っていた。たまに千穂子は文也に何も言わず私の知らない男と出掛けていた。
それに私が帰った後千穂子がシンナーの臭いをさせて文也がそれを見つけて喧嘩になり、あちき君と徹が喧嘩を止めに入った事。

私は黙って文也の話を聞いていた。

そして私に聞いてきた。
『千穂子の女友達文弥しか居ないんだよね。アイツから何か聞いてない?』


私はゆっくり煙草を取り出し火をつけた。
溜め息と一緒に煙を吐き出して独り言みたないな口調で話した。
『淋しいんだって…。文也あまり好きとか言わないでしょ?それが千穂子には不安になるみたい。淋しくてしょうがないって言ってた…。』


文也は暫く黙って運転していた。
それから広い公園の駐車場に車を止めた。

私達は黙っていた。
REBECCAの曲がずっと流れていた…。