檸檬の変革

文也が千穂子を連れて戻ってきた。

千穂子の様子が何時もと違う。
千穂子は文也のベッドに座った。

文也も様子がおかしい。千穂子のベッドのテーブルを挟んだ真向かいに座って黙っていた。

あちき君と徹は気付かない。
私だけが気づいた。

千穂子はあちき君と徹の話に混じり笑っていた。
でも、文也はずっと黙っていた。
普段からあまりお喋りじゃ無いのであちき君達は気にもしない。

私は胸の中に苦いものが広がって行くのを感じた。

夜になり私だけ門限があるので帰ると支度をしていたら、文也が口を開いた。
『送って行くよ。』

私はチラリと千穂子を見た。
千穂子はあちき君達とお喋りに夢中だった。

私が黙っていると文也がみんなに言った。
『送って来るね。』

私達は下に下りていった。
お邪魔しました。と声をかけ駅に向かおうとすると文也が呼び止めた。
『車で送るよ。』

私は振り向いて文也を見た。
文也は運転席のドアを開けていた。
私は黙って助手席に座った。