檸檬の変革

外に出て改めてバイクを見た。

文也の愛車は右半分がボロボロだった。
グリップが擦れて、ステップにも擦った跡があり、バックミラーが無くなっていた。

私は文也の愛車を優しく撫でてしゃがんだ。
どれ位居たのか分からなかったけれど、あちき君が心配して呼びに来る位私はバイクと居たみたいだ。

『修理すれば直るよ。』
あちき君が声をかけてくれた。
私の隣にしゃがみ続けて言った。
『文也の腕が良かったからこれ位で済んだんだよ。アイツすげーよ。』
私は黙って頷いた。


あちき君は優しい顔で笑い、大きな手で私の背中をポンポン軽く叩くと立ち上がり一緒にリビングに入っていった。


何事も無かった様にあちき君は自分のベッドの上に座り、徹はあちき君と向き合う様にコタツに入り、ベッドにもたれて文也が座り、私はテレビを正面に座った。

４人は他愛もない話で笑っていつも通りの時間が流れた。
今朝みた文也と千穂子の脱ぎ捨てた洋服はもう部屋には無かった。