檸檬の変革

私と徹は朝露で濡れた土手に行った。
土手の道までのぼると、徹は煙草に火をつけて私によこして、又新しい煙草に火をつけて自分で吸った。
私は渡された煙草を黙って吸って徹が口を開くのを待った。


徹は河とは反対の方向に向き指を指した。
私も同じ方向に向き直ると目を疑った。

数台のパトカーのランプがアチコチで光り、只ならぬ雰囲気を醸し出していた。

徹が重い口を開いた。

『海の帰り、俺とあちきは買い物するのに文也達と別れて帰ったんだけど、文也達はあの道通ったんだ。そしたらどっかの馬鹿が道にオイル撒きやがった奴がいて、アソコカーブだから文也のバイクが滑って怪我したんだよ。』


私は持っていた煙草を落としてしまったのも気づかず赤色灯の方を睨んでいた。

いったい誰がそんな事するのよ!
もし文也達が死んだらどおしてくれんのよ!

私のあまりの形相に徹はなだめる様に言った。
『文也の運転だったからあの程度の怪我で済んだんだよ。とっさに千穂子を庇ったしね。もし、他の奴だったら軽くても救急車で病院行きだったと思う。』

確かに最近アソコのカーブは走り屋がうるさいのは知っていた。
でも、あちき君達は走って無かった。
それなのに………。


私は朝日が目を照らすまで徹と赤色灯の群れを黙って睨んでいた。