「桜羅様、お食事を…」
『…………』
人形の様な桜羅に喋りかけるのは側近として紅葉につけられた
栞だ。
「桜羅様、こちらにいらっしゃってまだ何も食べてございません…
そろそろ生死にも関わってまいります」
本当に心配そうにする栞には、まぁまぁ桜羅も心を許している方だ。
だが、そんな彼女の頼みでも、そんな気分が全く出てこないのだ。
『…………いらない』
高価な女物の着物に身を包みながら人形の様に座り生きる桜羅は
感情が消え失せていた。
「…桜羅様…………」
栞は桜羅に伸ばしかけた手をハッとして手を引く。
そのまま部屋を一礼して静かに出て行く。
栞は与えられた自室に戻り、拳を握りしめた。
「…………桜羅様の幸せが私の幸せでござります……」
小さくそう呟き、暗闇の中
京の“あの場”に駆け出した。
あの、桜羅を笑顔にしてくれる
あの人達がいる場へ。

