僕がそんな思い出に暫く浸っていると、彼女は一軒のお花屋さんにたどり着いて中に入っていった
僕は彼女が中に入って見えなくなった後
店頭まで素早く歩いて行き、お花を眺める振りをして座りこんだ
なかなかスリリングな状況だ
昔見たスパイ映画の主人公みたいじゃないか
僕は花の間から恐る恐る中の様子を伺うと、彼女が大きな花束を抱えているのが見えた
それは彼女にとてもよく似合う黄色
彼女のような花で僕が大好きだっと言ったヒマワリだ
彼女はそれを両手で抱えながら出てきた
咄嗟に頭を屈めてしまう僕
ああ、今が声をかけるチャンスじゃないか?
『久しぶりにだね、君も花を見に来たの?』
それでどうだろうか?
僕がその言葉を言おうかどうか迷っていると、それより先にお花屋の店主であろう人が彼女に話しかけた
「そんなにいっぱい買ってどうするわけ?」
本当だ
それは僕も疑問に思っていたよ
いくらなんでも家に飾るだけの量には見えないから
僕は耳をそばだてる
すると彼女は元気なヒマワリのように
「大好きな人に持って行くの!」
と言って笑った



