大好きな君へ





僕は何とかその場をやり過ごしたことに安心したけれど、彼女のことを思い出して
また彼女を追いかけようと今逃げてきた道を引き返した



角を曲がって元の道に戻ると、彼女の後ろ姿はもうそこから消えていた



ああ…
僕はスパイになんかなれないな



そんな馬鹿なことを考えながら民家の塀に背中を付けて大息をつく



思い切り走って暑いはずなのに
不思議と汗も出ないし息も乱れてはいない



まあ昔から体力には自信があって、彼女もそこをよくスゴいって褒めてくれたっけ



なんて…ばかだな…


もう忘れなきゃいけないんだね?


こんな思い出にばかり浸ってちゃいけないんだよね?



僕はそう思うとそこから離れようと顔を上げた



ちょうどその時、少し向こうの民家から人が連れだって出て来るのが目に入った



今日はついてるのかも知れない



それはヒマワリを持った彼女の姿だった