走ったから息が苦しい。


携帯を耳に当て、暫く呼び出し音が続く。


『――…もしもし?』


電話越しの声は不機嫌そうだった。

寝起き……かな?



「あ、俺。裕真だけど……」
『……ん?どうした?』
「いや、あの……今寝てた?」
『…ああ、まぁな。』



年越し前に寝るなんて。


やっぱ寂しい正月。


『……どうしたんだ?』
「会いたくて、来ちゃった。」
『は?』
「家まで来ちゃった。」



電話の向こうでバタバタ音がして、それから目の前のドアが開いた。


「……お前」
「寝てたのにごめんな。」
「……とりあえず入れ。」


中に入ると、本当に寝ていたようでベッドが乱れていた。



「……で、いきなりどうした?家族と喧嘩でもしたか?」
「そういう訳じゃねーよ。本当にただ会いたくなっただけ。」
「……………。」