風のように雨のように、突然姿を表して混乱させる。
体は無意識に動かなくて、頭は支配されていく。
黒い華、そう王妃に。

「嫌!離して!!!」

白雪はあっさり王妃に腕を掴まれ、身動きを取れなかった。
いつの間に、そうしか言えない程の速さ。
あの美しい顔でよくやるものだ。‥感心している場合じゃない。

急いで王妃の腕を離さなければ。
白梅を向けて一振りした。

「甘いわよ?」

良いところに刺さったと思ったが、駄目だ。周りに居る兵士が邪魔をする。
それに強敵とも言えるヴェルト、カナリアを抱きながら襲ってきた。

「龍さん!!」

「‥油断しすぎ」

「そうだな」

思いっきり飛ばされて、木々に背中が激突した。
白雪が大声で叫ぶのが聞こえて、近くでエルビスが手を差し伸ばしてくれた。
痛みはそんなになく、ただ白梅に罅が入った気がした。
‥大丈夫。
早く白雪を助けなければ。

すると、奥の方からカイトの姿が見えた。
後ろにはアルルシスも一緒にいた。

「ヴェルト、いいかい?アルルシスと白雪姫を連れて帰るんだよ」

「了解しました、王妃様」