窓の隙間から、夜半の月明かりが差し込む。
明日が来れば、また仕事に追われる。
山のような仕事に埋もれていれば、きっと忘れることができる。


忘れたい、と仕事にすがりつく自分が、情けない。
こんなにも心の中に侵食していた彼が憎い。


私の恋は、今、夜闇の中だ。
明けることない夜にいる。

付き合いだした頃にはつがいのようだった。
隣にいることが当たり前だった。
呼吸をするよりも当たり前に、愛しかった。


この想いは、鎖になってしまったのだろうか。
報われない想いは、どこに吐き出せばいい。


愛しいという気持ちは育つほどに私の手に負えなくなっていった。
こんなに好きにならなければ、会いたいとは思わぬものを。

名前を呼んでほしいだけ。
安心させてほしいだけ。

大空に舞い去るように、気持ちが私の元を離れてしまった気がして。



いまさら、何もわからない小鳥のように、私は震えている。

明けない夜がないというのなら、
私に夜明けをみせてほしい。



鳴らない携帯電話を片手に、今日も夜は確実に闇を深めていく。








あしびきの山鳥の尾のしだり尾の
ながながし夜を一人かも寝む