私は近くにあったソファーに座った。
ロンも私に向かい合っている1人用のソファーに座った。
「おまえ、今日ステージに立つんだろ?」
「…うん、そうだよ。でも、私はやっぱりこの世界に戻って来れないみたい」
私とロン以外の五人は黙ったまま、私達2人を見ている。
「ふざけんなよ!!それで諦めんのかよ!?」
ロンは突然立ち上がって、私に言った。
「お前、知ってるか?お前がColl Juvenileから抜けてCDのランキングが落ちたんだ」
そういわれて自然と涙腺が緩む。
「お前、知ってるか?お前がいなくなってから、ライブのチケットの売り上げ減ってんだ」
…そんな、言い方しないでよ。
私を期待させるような言い方しないで。
するとロンは、懐から大きな茶封筒を私に渡してきた。
「これ見てみろよ。全部お前宛のファンレターだ。みんなお前のこと待ってんだよ!」
茶封筒の中に入っている手紙を一つ一つ見ていくと、
"また楓香ちゃんの歌が聞きたいです!"
"楓香ちゃん辞めないで!"
"楓香ちゃんがライブのステージに戻ってくるのを待ってます"
などと、どれも私への応援メッセージばかりだった。
そんな手紙が50枚ほど入っていた。

