「ふぁー…」
欠伸をしながら、階段を上る。
現在の時刻は6時30分。
もちろん人の気配はない。
授業開始時間は8時50分、野球部集合時間は7時00分。
改めて考えると、私頑張ってる…
ま、その分委員長の名前だして授業出てないんだけど。
カッカッカッ―――
誰もいない階段は、靴音が嫌というほど響く。
一階から四階までの吹き抜けは解放感を促し、自由を感じさせる。
時折手すりにぶつかるバッグの鈍い音が、全てを支配した。
「おはようございます………って、」
委員長は、寝ていた。
寝てはいるが、仮眠用ベッドの上でもなく、ソファの上でもない。
旧応接室である無機質な床に、直で。
「あのー…委員長?」
五感が鋭い委員長。
寝ていようと気づいているはず。
たとえ目元に隈が刻まれていても。
「うるさいよ。僕の睡眠を邪魔するなら――」
「委員長、私です」
例のトンファーを出して緩く構えたそれを、やんわり押さえる。
「あぁ、真菜?悪いけど代わりに見回りいってね。よろしく」
「え、あの、委員長、」
「うるさい。腕章あげるからさっさとつけて。野球部が登校してくるよ」
「え、でも、」
「どうなってもいいの?」
「…………はい」
気づけばもう20分も経っていた。
有無を言わせないオーラに圧倒されつつ、腕章を制服にくくりつける。
騒がしさが増しつつある一階へ、歩を進めた。