「最近ね〜、夜中におかしな音がしたり、閉めた扉が開いていたり、なんか怖いのよねー」


相談者であるおばさんが俺の事務所にやって来てから、三十分は経ったであろう、世間話から始まり、やっと相談内容が分かった。

お互い椅子に座っていたが、俺は長い話は嫌いだ。


「はぁ〜、そうですか、困りましたね」


俺は、今までの時間を返せと言わんばかりのイライラ感を押し込めて、他人事の様に言い放ってやった。


「何、その態度は!」


おばさんは自分の愚痴を聞いてやっただろう、だからそろそろ帰ってくれないかなという俺の気持ちを汲み取っていたらしく、会話の最中の後半からおばさん自身もいらついていたらしい

「統合失調症ってしってます?」


「トウゴウシッチョウショウ?」


目の前のおばさんがそう言った。

 
俺は適当に、いや、簡潔に「統合失調症=トウゴウシッチョウショウ」を辞書から引用したかのように説明した。