魔王と女神のシンフォニア

――――――
柔らかくて暖かいそれにいい匂いもする・・・。
それが先の相手のものだとわかるのは意識が戻るにつれて時間はかからなかった。

「うわっ!」
バッとその場から飛び退く。

落ち着け落ち着くんだ。
相手はこんなにかわいいけど男なんだ。自分にそういいきかせているところに凛とした声が響く。

「すみませんでした。私、男性とお会いするのは父様意外は初めてなものでびっくりしてしまって」
なかなか外には疎い人なのだろうか。

「いや、こちらこそすみません。こちらもいろいろ見てしまいましたし。」
「いろいろ・・・ですか。」
瞬時に相手の顔が赤くなる。

それはそうか女装って趣味もやはり他人に知られてしまっては相当恥ずかしいものなんだろう。今も女性のような服装をしているのもプライドかなにかなんだろうな。
勝手な考えを歩は頭の中で勝手に解釈しているなか相手が口を開く。

「あっ 申し遅れました。私、アリス・レーベルと申します。」
「あぁ 僕は・・・」
「差義理歩さんですよね。先ほど自己紹介なさっていたので了承してます。」
そういえば、自己紹介してる間に突飛ばされたことを何となく思い出した。

「アリスさんか。すごく女の子らしい名前だね。」
「いえ それほどでも。」
少し照れる仕草もまるで女性そのもので本当にすごいなぁと感心する。

ふとあることを思い出す。

「あっ!大丈夫!貴方の趣味のことは誰にも言わないから安心してください。」
「私の・・趣味ですか?」
不思議そうに単語を繰り返す。鈍感なのかそれともそれほど気にしていないのだろうか。

この際はっきり言ってみることにした。

「いやだから女装のことは誰にも言いませんから安心してください。」
とりあえず安心させるように笑顔を作り言ってみた。

しかし、相手からは歩の考えと反する言葉が返ってくる。

「女装・・私がですか?」
「いやだって女性ものの服とかが荷物に。」
「だって、私は女ですから。」
アリスは何を言っているのだろうとキョトンとした顔でこちらを見てくる。