大和 奈々。高校一年生。
クラスのお姫様的存在。男子なんかみんなメロメロだ。
ただ、俺にとっちゃぁケバいだけの女だ。
俺の好みじゃねー。

(まぁそれは向こうもだろーが)
そんなことを考えながら徐に携帯をいじっていると、後ろからかなり元気よく声を掛けられた。ていうか、体当たりされた。
「う、え、は、ら!よーーーーすっ!」
徐々に人数が増えガヤガヤし始めた朝の教室でも、その声はひときわ大きく響いた。だが、クラスの奴らの顔も覚え出した5月初旬、初めはびっくりして振り返っていたクラスメート達も、今は毎日のことなのでもう日常の光景として受け入れていた。ただ一人、当の本人だけは慣れていない。
上原と呼ばれた声の主は、腹をいつものように勢いよく机にぶつけた。声にならない唸りをあげた後、またいつものごとく古くからの級友を睨めあげた。
「〜〜っ‼……新谷…てめぇはいつになったら普通に挨拶出来んだ?」
彼の怒りは静かであるが、迫力がある。それに対して級友改め新谷はひょうひょうと答えた。
「やだなぁ、俺なりの愛ある挨拶じゃんか!鈍臭い上原の反射神経を鍛えてやろーと…」
「いらん世話だ!お前は面白がってるだけだろーがよ。」
「そんなっ!俺も普通に挨拶したいよ?毎日毎日心苦しいよ。いつになったら避けられるの…」
「もう黙れ」