レイが来たのを確認すると、ネムは静かに扉の奥に下がった。
「ほら、ついたよ。見てごらん」
レイは腕に抱いている子の耳元で優しく語りかける。
「うん…」
小さな子どもであるその子からは老人のような枯れた声。
「きれ、い…」
頭上には満天の星。
最近では、外ではこんなに綺麗に星を見れない。
白い砂が空を覆い、意志を持つかのようにうごめいているせいだ。
ここには他に客はいない。
この子のためだけのプラネタリウム。
「お姉、ちゃん…。」
「うん」
レイは静かに、微笑みながらその子の頬を優しく撫でている。
「ありが、とう…」
その子の目からは涙が幾筋も流れ出す。
流れた涙は、肌を滑らないで、吸収されていくようだ。
「泣かないで!お願いだから、泣かないで…ッ!!」
溶けちゃう
弱々しい声でレイが叫ぶ。
レイは涙を止めようとタオルで目の下を支えるように抑える。
「お、姉ちゃ、ん、ごめ、ね。星、見れ、た。楽、し…った。…あり」
流れた涙が頬を溶かす。
顔を溶かす。
子どもの輪郭は崩れ、レイは砂にまみれた服を抱いて泣いた。