「大丈夫?」


慌てふためきながら自転車を立てていく女子に声を掛ける。

女子はポニーテールを揺らし顔を上げると、これでもかというくらいに目を大きく見開いた。


こぼれ落ちそうなほど大きな瞳に白い肌、ぷっくりと厚めの唇。

俺の肩の高さにも届かない小さな身長でも、長くすらっとした脚。

絵に描いた美少女、というよりは童顔だがとてつもなく可愛い。


……俺、ラッキーかもしれねぇ。




「……ほら、早く立てちゃおうぜ」

「う、うん」



ありがとう、と小さく言ってその女子は自転車を立て始めた。

俺も二つずつ自転車を立てていき、すべての自転車を立て直すのにはそう時間はかからなかった。



最後の一台を女子が立てて、俺たちはふうっと息を吐いた。


「ほんとにありがとうございました。……一年、だよね?何組?」



少しオーバーに頭を下げると、可愛らしく首を傾げて俺に組を問う。

彼女の胸元にある校章も緑色で、一年だということがわかる。


この学校は制服の校章の色が学年ごとに変わっていて、制服を着ている限りは相手の学年がすぐにわかるようになっている。



「俺は1-6だけど……君は?」

「1組!1-6、明日遊びに行くね!バイバイ」

「あ、ちょ」




彼女はスササーと自転車で行ってしまった。

魅惑のポニーテールをサラサラと揺らしながら去って行く姿は、お茶目で少し悪戯好きな妖精のようだ。


1組……ってことはエリートだ。

俺のいる6組は、この学校で一番頭が悪い。

逆に1組はトップ。


普通にクラスを言ってしまったことが恥ずかしい……。