「止めてって言ったよね。貴方、話聞いてなかったの?」


映画を観終わって、近くのファーストフード店に入って僕はコーラ、彼女はレモンティーを頼んで席に座ると彼女は僕を射殺すような眼つきで僕を睨んだ。


「聞いてたけど、怖くて・・・。」


「そんな事はどうでもいいの。千切るわよ。」


「え?契る?本当に?」


「はぁ、本当にムカつく。」


そう言いながら彼女はレモンティーを飲んだが、お気に召さなかったようで、すぐに口を離して黙り込んだ。


「でも横顔可愛かったよ。」


「あら、そう。知らないとは言わないわ。」


知ってる。とは言わないのは、彼女の謙虚さなのだろう。映画を観ている彼女は僕と話している時より生き生きとした笑顔だった。特にスプラッター度が高いシーンは凄い笑顔だった。映画に嫉妬してるのかな僕・・・。


「僕と居て楽しい?」


「楽しくないわね。映画は楽しかったけれど。」


「そう。楽しんでくれて良かった!」


僕がそう言うと、彼女は不機嫌そうに眉をひそめて僕を睨んだ。


「貴方は楽しかった?」


「もちろん楽しいよ。映画も今も。」


僕がニコニコしていると、反比例の如く彼女は不機嫌になっていくみたいだ。


「あっそ。貴方と私は正反対みたいね。」


「デコボココンビだね!あ・・いや、デコボコアベックだね、恋人同士だし!」


「アベックって・・・古いのよ!」


今日、初めて彼女のチョップを脳天に受けた僕は、少し彼女との距離が縮まったと勝手に思った。