わたしのおはなし

それはきっと、ごく僅か。
得ようと思って得られるのであれば、きっとこの世の中はもっと明るく、華やかで、笑顔が満ちていても可笑しくは無いし、わたしという存在も、あるはずが無い。
背後に気配を感じ振り向くと、制服姿の少女が立っていた。
濁った瞳でこちらを見て全てが終えたことを確認すると、歪に歪んだ笑顔で麻袋に近付き、中に入っている肉の塊を愛おしそうに抱いた。
その表情の、なんと恍惚としていること。
少女はわたしに礼を言った。
そして、スカートのポケットから取り出したカッターナイフを首に当て、突き刺した。
血飛沫が舞い、麻袋の上に伏せた少女の体が動くことは、もう二度と無いだろう。
わたしは背を向け、闇に溶けた。
後日、世間では高校生の女子生徒が友人を鈍器で殺害し、後を追うようにして自殺したと大きく取り上げられ報道された。
わたしのことはなにひとつ、触れられていない。
なぜなら、わたしはあなたで、いつだって側に在りうる存在であるからだ。
ともだちに裏切られたことはないだろうか。
都合よく利用され、すてられたことはないだろうか。
自分ばかりが不幸になって、ともだちばかりが幸せな道を歩んでばかりで、羨んだりしていないだろうか。
傷付き、感情に蓋をし、無理を重ね前に進み続けてきた記憶はないだろうか。
もしくは。
いつまでも、共にありたいというともだちはいないだろうか。
少しでも心当たりがあれば、わたしを呼んで、楽になることをお勧めする。
必要なものは少しばかりの独占欲と、絶対にして最善の選択を選びとるその両手と、その命。

心が揺らいだそこのあなた。
わたしを呼んで。
もう、頑張るのを、やめてみようか。