「はい、では挨拶をお願いしよーかな!」

「・・・はい」

「黒板に名前を書いてもらいましょう」


そう言われて、チョークを取り黒板に字を書き始めた。


丸っこくて小さい字。


身長のせいか、大きくは書けないみたいだった。


だけど、実に堂々としている。


恥ずかしそうにはしてないし、怯えてる様子もない。


大きいな・・・。


そんなことを考えながら俺は彼女を見ていた。


・・・っていかんいかん!!


俺には里見という彼女がいるじゃないか!


だから、ほかの女子に見とれちゃ―――・・・。


「書き終わったみたいだな。じゃあ自己紹介してもらおーかな」

「・・・」


黒板には漢字三つが書かれていた。


『品川碧』


・・・席が近くなりそうだな。


俺はかすかに嬉しいと思ってしまっていた。


この時は全く気付かなかったけど・・・。


「品川碧です。T県から引っ越してきました。・・・これでいいですか。先生」

「え?あーっと・・・。もうひと言ぐらい・・・」

「分かりました。えっと・・・じゃぁ」


皆は興味津々で釘付けになっていた。


・・・そう。なって『いた』・・・。


「できればあまり関わってこないでください。あたしは独りがいいんで」


彼女がそう言った瞬間、クラスの雰囲気が一気に冷たくなった。