「わりぃ、いいとこ邪魔しちまって!」

「・・・・・」


佐伯が、ハハッと笑いながら出てきた。


・・・さっちゃんは?


「大事な彼女、置いてきていいの?」


あたしは冷たく言い放つ。


そう、これがあたしだ・・・。


「いや、お前が勘違いしてることあるからよ!あいつは・・・」


嫌だ、嫌だ、嫌だ・・・。


聴きたくない・・・!


そう強く思い、あたしは手を伸ばし真田の腕をつかむ。


「行こう・・・真田」

「え?あ、おい!・・・じゃあ、また後でな!」

「・・・おう」


真田は、訳がわからないと思うが、あたしに合わせて一緒についてきてくれた。


佐伯・・・。


あたし、かなり態度悪かったよね・・・。


ううん・・・。


でも、これでいい・・・・・。


もう、これ以上あいつと関わり合いたくない・・・。


「・・・品川?」

「ごめん・・・急に・・・・・」

「いや、別にいいけど・・・。なにか、あったのか?」

「・・・・・」


あたしは黙る。


悪い癖・・・。


言いたくないことがあると、直ぐに黙って、逃げちゃうとこ・・・。


でも、さすがに・・・。


頭の上に、手が置かれる。


「・・・え?」

「言いたくないなら、無理しなくていいよ。いつでも、聞くから」

「・・・ありがと、真田」


暖かい手と言葉・・・。


冷えきったあたしを、温めてくれてるよう・・・。


まるで、そう・・・。


湯たんぽのように・・・。


じんわりと、あたしを暖かくしてくれる・・・。


だけど・・・


あいつと・・・佐伯と居る時と、違う・・・。


心が自然とあったまって、氷を溶かす。


あいつは、あたしの太陽なの・・・。


その時からあたしは、あいつが好きだったのかな・・・。


「・・・一つだけ確認・・・・・いい?」

「・・・?」


改まって、真田が聞いてくる。


「もしかしてだけど・・・好きな奴って、カナ?」

「・・・っ///!」


顔が、体が熱くなる。


その名前を聞くだけで・・・。


「やっぱりな」

「・・・ごめ」


謝ろうとしたら、口を掴まれる。


「・・・!?」

「謝んな!確認したかっただけだしよ!それに・・・」


ぐいっと腕を引っ張られ、体が近くなる。


さすがにこれは、恥ずかしい・・・。


「俺が、あいつを超えるぐらい、おまえを惚れさせてやる」


強引だけど、どこか優しい・・・。


なんで、こんなに好きになってくれるの?


「・・・うん」

「あ、また笑った」

「え?」


あたし、笑えてる・・・。


笑顔なんて、どこかに消えたと思ってたのに・・・。


やっぱり、こいつは不思議・・・。


いつか、心から好きになれる気がするよ・・・。


あたしは、じっと真田を見る。


「ちょったんま・・・///」

「?」


急に、真田が顔をそらしてしゃがみこむ。


「さすがに・・・そんな見つめられると・・・///」

「え///?あたし、そんなに見つめて・・・た?」

「うん・・・」


顔を真っ赤にして、恥ずかしがる真田が可愛くて、あたしまで照れてきた。


「あ、そうだ!俺のこと、ハルって呼べよ!もしくは晴樹!」


びしっと言われ、あたしはちょっと驚く。


「・・・なんで?」


あたしがそう聞くと、真田は悲しそうに落ち込んだ。


まるで、七変化・・・。


「俺は、お前のこと碧って呼ぶからさ~・・・!それに・・・呼ばれたい・・・し・・・・・・」

「ふーん・・・そういうものなの?めんどくさいね」

「・・・えぇ!?」


涙目で、こっちを見る真田。


うん、やっぱり面白い・・・。


「分かった。じゃあ・・・」


あれ?


いざ、呼ぶとなると・・・。


は、恥ずかしい・・・///!?


「・・・はる・・き・・・・・///」


あたしは、恥ずかしがりながら言う。


こんなに、恥ずかしいもの・・・?


「・・・お前、その顔は反則だって・・・///」

「は?どんな顔?」

「・・・知るかっ///」

「??」


あたしは、意味が分からなかった。