「・・・それでね、仕返ししたいって思ったの・・・。同じくらい、傷つけてやるって・・・」

「それで、碧に近づいたのか?」

「・・・うん・・・・・。でも、最初だけだった・・・」

「え?」

「一緒にいることが多くなって、あーちゃんといることが本当に楽しかった・・・。恨んでるってこと、忘れるぐらい・・・。ある日ね、あーちゃん家に行ったの・・・。そこで、あーちゃん家の事情を知った・・・。弱点も・・・・・」


話を最後まで聞かなくちゃいけない気がした。


里見が、俺から離れて、体育座りをする。


「それを知ったとき、最初の目的を思い出したの・・・。これを使えば・・・って・・・・。だけど、迷ってる自分がいた。ちょっと成長したのかな?こんなことしたって、好きな子が戻ってくるはずないって・・・。あーちゃんは、なんにも悪くないって、分かったの・・・。だから、友達で・・・親友になろうと思った。本気でね」


いつもの笑顔を俺に向ける。


あぁ・・・。


本当に、憎んではなかったのか・・・。


里見の言ってることは、嘘じゃない・・・。


「なのに・・・」


里見が顔を足の間に埋める。


「つい、話しちゃったの・・・。あたしの友達に・・・。その子には、あたし、なんでも話してた・・・。だから、いつもの調子で・・・。あーちゃんに近づく前の日・・・あたし、その子にお願いしてたこと、すっかり忘れてて・・・」


ドクンと、体がなった。


汗が口の中に入った。


しょっぱい味がする・・・。


「あたし・・・その子に、弱点見つけるから、その時は協力してって・・・頼んでたの・・・!それに、親友になりたいって思ってること・・・言い忘れちゃって・・・・・!」

「・・・碧は、六年生になった頃からって・・・・・」

「うん・・・。行こうと思ったけど、友達に何かと頼まれたり、話をしてきたり・・・。あの子って、自分から来ることってないから・・・喋る機会がなくなっちゃって・・・・・」


スカートを握る手が、震えてスカートを固く握りしめる。


「その頃から、あーちゃんはいじめられるようになって・・・。あたし、急に怖くなった・・・。これからまた、あーちゃんと仲良くしてたら・・・あたしもいじめられるのかなって・・・。それで、行かなくなった・・・。あーちゃんが怪我したって知らせられたとき・・・いい気味って・・・ちょっとだけ思っちゃったの・・・!あーちゃんが話しかけたきたとき、自業自得とも思って・・・。最初の目的、言っちゃって・・・!」

「・・・・・」

「あーちゃん、かなり、傷ついた顔してた・・・!あ、って思ったけど・・・あたし、その場から逃げちゃって・・・!」

「・・・うん。でも、でもな、里見・・・」

「・・・?」


涙でぐしゃぐしゃになっている顔を、俺に向ける。


俺は、シャツの袖で、顔を拭いた。