追いかけたい・・・。


この衝動は、どこから沸き上がるんだ?


「・・・か、奏多・・・・・」

「あ、里見・・・」


里見が不安そうな顔で、こっちを見ている。


少し、肩が震えていた。


「・・・どうした?」


落ち着いた声を装って言う。


「・・・どうしよう・・・・・。あたし・・・あの子に・・・かなりひどいこと・・・・・」


ぽたぽたと、涙が落ちる。


手で顔を覆う。


地面に落ちた涙が、どんどん広がる。


「・・・里見、もしかして・・・・・」


お前が、碧を追い込んだのか・・・?


「・・・うん。取り返しがつかないことした・・・・・。あーちゃん、背中に・・・・・大きな傷、出来ちゃって・・・・・・!」

「え?大きな・・・?」

「うん・・・。傷付けるつもりなんて、なかったのに・・・・・!まさか、あんなに深く、怪我するなんて思わなくて・・・・・!」


里見が、地面に膝を付く。


俺は、唖然とした。


碧は、大して深くなかったって言ってたのに・・・。


「碧には、全部聞いた・・・。なんで、お前が・・・」

「・・・そっか・・・・・」


里見が・・・そんなことするはず・・・・。


だって、俺が凹んでる時・・・。


誰も気づかなかったのに、お前だけは気づいてくれて・・・。


とても、優しいやつだから・・・。


「あたしね・・・あーちゃんのこと、最初は嫌いだったの・・・・・。自分の言いたいこと、なんでも言って・・・。自由で・・・。だけど、皆に一目置かれる存在で・・・。それにあのルックスだから、男子にはモテモテでさ・・・」

「・・・・・」


それはつまり、羨ましかった・・・。


俺は、里見にハンカチを渡す。


「ありがとう・・・・・」


かすかに微笑む。


目元が、涙で赤くなっていた。


「あたし・・・その頃、好きな人がいて、告白して付き合えることになって・・・かなり、嬉しかった・・・。でも、一ヶ月もしないうちに、振られちゃって・・・・・。理由が、あーちゃんを好きになったってらしくて・・・」


また、涙がこぼれ落ちる。


「憎かった・・・。あたしの好きな人奪ったって・・・。馬鹿だよね・・・。でも、本当に大好きだったの・・・・。だから、かなり憎かった・・・。あんな奴、顔がいいだけじゃんって・・・友達も一人も居ないくせに・・・って・・・」


馬鹿だよね、あたし・・・。


そう続けながら、俺に寄り添ってきた。


だけど、この時・・・。


その、肩を抱こうと一ミリも思わず・・・。


頭の中は、碧のことで一杯になっていた・・・。