「突然、いじめられるようになった」

「・・・っ」


彼女がそう言った瞬間、冷たい風が吹いてきて、雲行きも怪しくなってきた。


「その時にね、あたしは背中に傷を作られた。女子の中心部にいる子が、刃物を持ってきたから・・・。あたしはさ、刃物とか・・・嫌いなんだよね。その理由は言えないけど」


危なかった・・・。


今までで、一番寂しそうな顔をしているのに・・・。


つい「なんで?」って言いそうになった・・・。


「そして、暴れてしまった。その時に、背中に刃物を落とされた。まぁ、大して深くなかったから大丈夫だったんだけど・・・。女子たちがかなり動揺してさ・・・」

「・・・」


なんだろう・・・?


もう言わせちゃいけない気がする・・・。


止めなきゃ・・・いけない気がするのに、体は動かない・・・。


「その時にね、ある女子が言ったの。あたしと仲良くしてた子の名前を呼んで・・・「・・・に知らせなきゃっ!」って。その前にその子は、リーダーにって付けてね」

「・・・っ!」


それって・・・つまりは・・・!


「もう、分かった?そうだよ。その子は、元々あたしをいじめるのが目的で近づいてきていたんだよ・・・」

「・・・!!」

「そのあと聞いた。『あんたなんか、大っキライ!あんたの弱点見つけるために近づいたんだ。あんたのことなんか、友達となんて思ったこと一度もなかった!すっとあんたが憎かった!』って・・・」

「・・・そ・・・んなこと・・・が」


・・・。


そんなことがあったのに、俺は・・・。


気軽に聞いちゃいけなかったんだ・・・。


「・・・これでいい?満足?じゃあね、もうあたしに関わってこないで」


とても冷たい目をしながら、彼女は言い放つ。


分かる・・・。確かに分かる・・・。


けど・・・!


「・・・なっ!?」


俺はすれ違った瞬間、品川サンの腕をつかんだ。


びっくりした顔をして、少し起こった顔になった。


「・・・なにすんのよっ。いい加減にしてくれる・・・?手、離して」

「嫌だ」


俺は冷静に答えた。


「な・・・んで」

「確かに、碧が言ってること分かる。だけどさ、これから先、人と関わらないで生きていくなんて無理なんだよ」

「・・・え?」


俺は無意識のうちに、『品川サン』じゃなくて『碧』と呼んでいた。


「だから、まずは誰とでもいいから。コミュニケーションをとったほうがいいと思うぞ。ひとりでもいいから、友達を作れ」

「な・・・っ!?余計なお世話よ!」

「そうだろうな。だけど、このままほっとくわけにはいかねぇ」

「え・・・!?」

「俺があんたの友達一号になってやんよ」

「・・・!!」



―――・・・。


俺がこの時ほっとけなかった本当の理由を。


俺はまだ知らない・・・。