太陽の竜と闇の青年

俺が空風壱の名前を出すと、フウの顔が真剣そのものに変わった。


そう言えば、空風壱の名前を知っていたのはフウだった。


「おい、フウ。フウは空風壱をどこまで知っているんだ？」


俺がフウにそう聞くと、フウは俺をまっすぐに見た。


「僕、今日の朝、アイツに会ったんですよ。空風壱に。かなり剣術の練習を積み重ねてきた僕でも壱に勝てなかった。しかも、僕は息が上がっているのに、壱は息が上がっていなかった。それに狙う場所は正確で素手で倒そうとしてくるんだ。すごく強かった。ルウがあいつと戦っても、勝ち目は絶対にない。殺される確率は１００％だ」


１００％……。


「でしたら、ルウさんのことは黙っておきましょう。ですが、ルウさんのことを黙っていたらどうやって説明するんですか？」


ジンの判断は間違っていない。正論だ。


ルウが朱雀の翡翠を持っているんだから、どうやって説明すればいいのか……。


「朱雀の翡翠は、蒼国の翡翠です。だからそれを上手く使えばいいんですよ。そんな難しい顔をしないでくださいよ。簡単ですから。つまり、朱雀の翡翠は、リクさんの物だってことにするんです。まぁ、実際はリクさんのものだったのをルウが取っちゃったんですけど。それで、リクさんが朱雀のことについていろいろとしゃべればいいんですよ。あ、ルウのことは絶対に言わないようにしてね」


なるほど……。


さすがフウだ。


頭がよく回るな。


俺はフウの頭のよさに感心しながら、朱雀についての説明を一生懸命考えていた。


「まぁ、いざとなったら、僕がフォローしますから大丈夫ですって！！」


あっはっはっはっは！と高らかにフウは笑った。


それと同時にスッと襖が開いた。


そこには空風壱が立っていた。


一瞬だけ目が合ったが、空風壱は俺たちが目に入っていないかのように横を通り過ぎて行った。


その後、朱雀の説明の仕方を練習してから俺たちは中に入った。