太陽の竜と闇の青年

顔をあげるとそこにはほかの櫓とは違う少し大きめの櫓があった。


「入るぞ」


男が短くそう言うと、中からいいよー、という牙城の声が聞こえた。


ここが牙城の部屋。


スーッと音がして襖が開いた。


部屋の奥には、昨日とは違う淡い水色の着物を着た牙城がいた。


「やぁやぁ!君たち、すっごい巧みに言葉をだましたんだねぇ。すっごいよー」


牙城はバサッと扇子を広げた。


後ろでフウがくっくっくと、笑っていった。


「まぁね。僕って結構口が達者らしいから」


空風壱を見てみると、彼は腕組みをして壁にもたれていた。


「ところで、君たちは僕に何の用があって来たのかな?」


牙城がニッコリと笑いながら俺たちに聞いた。


俺はその場に座りながら牙城を睨むように見た。


「玄武の翡翠について聞きに来た」


俺がそう言うと、牙城の耳がピクリと反応した。


それと同時にフウの声が後ろからした。


「あ、やっぱり?牙城に会うのってそれを聞くためだったんだー。僕の勘、当たっちゃった。あはははは」


暢気に笑うフウを微笑しながら見た後、牙城は静かに言った。


「何で君たちはそのことを知っているんだい?」


俺たちは少しだけ戸惑った。


ここでルウのことを話してもいいのだろうか……。


俺はチラッとフウを見た。


フウも少し、迷っている顔をしていた。


「言えないようなこと?」


牙城は勝ち誇ったような顔になっていた。


「少し時間をくれ」


俺たちはそう言って空風壱の横を通り、外へ出た。


空風壱はついてこなかった。


「どうするんですか?」


ジンが首を傾けて聞いてきた。


俺とフウは、小さくうなった。


「う~ん……。ルウのことと、朱雀のことについて話してもいいのかどうかなんだよね……。まぁ、僕は、朱雀のことは話してもいいと思うけど、ルウのことは話したらいけない気がするんだよね」


「何でだ?」


俺がフウに聞いた。


すると、フウがターバンをいじりながら言った。


「だって、ここは暗殺者がいるところだよ?もし、ルウが朱雀の翡翠を持っているってことを話して、牙城がルウに暗殺者を送ったらどうする?まあ、ルウもそう易々とは殺されないと思うけど相手もそれなりの実力はあるはずだ。それにルウは女だし。さっきみたいな覇気は怖いんじゃないかなぁ?だから、ルウの話はしないほうがいいと思うんだ」


あはははと、フウは楽しそうに笑った。


「まぁ、確かにそうだな。もし、さっきの空風壱という男が暗殺者として、ルウを殺そうとしたら、双剣を扱えるルウでも命拾いをする確率は低い」