太陽の竜と闇の青年

[壱]




俺は、和菓子屋から出た後、牙城の元に向かっていた。


しかし、今、頭に浮かぶのは先ほどの少女のことだった。


あれがウィン=ルウであり、ウィン=フウの双子の姉。


無邪気に笑うあの顔はフウとは全然似ていなかった。


「他国のヤツはあんな笑い方をするんだな」


莢からは他国は奴隷制度というものがあり、他国は暗いイメージがあった。


だが、ウィン=ルウの笑顔を見たとき、本当にそうなのか、という思いになった。


しかし、あんな風に笑うウィン=ルウが双剣を持つ理由がわからなかった。


第一、あんな細い腕で双剣を扱えること自体が不可能に近いだろう。


ましてや、女だ。


「世の中にはわからないことがたくさんあるんだな」


俺はガリガリと後頭部を掻きながら、足早に王宮に向かった。


が、その足がピタッと止まる。


あれは……。


スッと目を細めて前方を見ると、ウィン=フウが誰かと歩いてくるのが見えた。


俺はいつもの癖でタンッと軽く飛び、そのへんにあった店の屋根に登った。


ウィン=フウと一緒にいたのは、莢からもらった分厚い紙に載っていたリクという男と、ジンという男だった。


三人は何やら気難しい顔をして話合っていた。


まぁ、フウは笑っているがな。


グッと拳に力が入った。


許せなかった。


今まで一度も傷をつけられなかった俺の肩を剣で切ってきたことが。


久しぶりに見た、強者の姿。


だが、アイツはまだ弱い。


もっと、もっと強くなって俺に向かってこい。


久しぶりに、闘争心がフツフツと沸いてくる。


俺は、三人を横目に、屋根の上から消えた。