太陽の竜と闇の青年

「僕は、ウィン=フウだ」


すると、男はまるで昔から知っているかのように言った。


「そうか」


僕はそれから剣をしまい、男にいった。


「それで?その暗殺者が僕に何の用なんだ?」


男は僕を見据えた。


「俺には壱という名前がある」


僕はこれは失礼、といって言い直す。


「壱は僕に何の用だ?」


壱は僕の腕をいきなりつかんできた。


僕は反射的に身構える。


「ウィン=フウ。いつから剣術を習い始めた」


突然の呆気ない質問に少し驚きつつも、冷静に言う。


「軽い剣術は4歳からだ。本格的な剣術は14歳から」


壱は小さくうなずいた。


「かなりの練習量だな」


僕は自慢するように笑った。


少しでも弱みを見せたら、壱に負けそうだったからだ。


「まぁね。これでも努力家なんだよ」


男は、僕の二の腕から手を離していった。


「ウィン=フウ。お前のその態度、気に入った。それに、そこまで弱いというわけではないらしいしな」


壱は、そう言うと、僕から少し距離をとった。


「だが、お前はこの先の祠には行けない。俺に勝てないのだからな」


壱は、そういうとスッと姿を消した。


まるで陽炎のように。


「……空風壱。……お前は僕の敵だ」


僕は思った以上に壱に負けたのが悔しかったらしい。


いつもの笑みがどうしても今回は出せなかった。


そして、恐怖心というものを、僕は今日初めて知ったことにも悔しくてたまらなかった。


「僕は……、もっともっと強くならないといけないんだ!昔みたいには、なるわけにはいけないんだ!!」


ドンッとそばにあった木を殴りつけると、僕はどこにあるのかわからない祠を遠目にみて、来た道を帰っていった。