太陽の竜と闇の青年

その途端、木の上から黒い何かが飛び降りて、僕のみぞおちを殴ってこようとしてきた。


僕はそれをギリギリのところで交わし、男の首筋を斬ろうとした。


しかし、それを簡単に交わされる。


「チッ!」


こんなに強いヤツは初めてだ。


男はグルッと向きを変えて、僕の背中を蹴ろうとした。


僕はその足を剣の峰で抑えた。


だが、男の速さは遅くなるどころか、だんだんと速くなっている気がした。


そして、僕の剣が男の肩をかすったのと、男が僕の右の二の腕を強く蹴るのが同時だった。


「うぐっ!」


「……っ!!」


僕は剣を落としてしまった。


男は僕の剣にむかって歩き出す。


僕は剣を取ろうと必死に二の腕をかばいながら歩いた。


「僕の……、僕の剣に触るな!!!」


しかし、男は剣など目に入っていないかのように、剣の横をスッと通り過ぎて、僕の前に歩いてきた。


「……僕に、何の用だ」


僕は、今まで一度もルウに見せたことのない鋭い目を男に向けた。


「他国の男はこんなにも弱いのか」


男は黒ずくめの服を着ていた。けど、その顔は目しか見えなかった。


「違う!僕が弱いだけだ!僕が……だけど、僕は強くなるんだ!」


僕は両手剣を手に持ち、立ち上がった。


「無意味だ」


男はスッと目を細めて、僕をみた。


その目をみた僕は、少しだけ身が竦んだ。


こいつ……。


「お前は、何だ?」


僕が聞くと、男は感情のない声でいった。


「空風壱。暗殺者だ」


これが……。


暗殺者…………。


僕は暗殺者というものの恐ろしさをここで初めて知った。