自分が墓に行ったとき、既に先客がいた。
「空風」
自分が空風の名を呼ぶと、空風はこちらを振り向いた。
その真っ赤な目に一瞬ドキリとする。
自分は、空風の隣に腰をおろした。
「泣いて……いたのか?」
空風は自分の問いに答えなかった。
「空風はよくここに来るな」
自分は横目で空風をみた。
空風は小さく肩を竦めた。
「シルバ。俺はおかしいのだろうか?」
「は?」
「何故かルウが死んだとは思えないんだ。実感が沸かないというか、すぐに後ろから俺の名前を呼んでくれるような、そんな気がするんだ」
あぁ……。
空風もそういう思いをしていたのか。
自分と全く同じじゃないか。
「自分もだ。自分も、ウィンが死んだとは思えない。もう一年が経つというのに、実感が沸かない」
すると、空風が突然立ち上がった。
「和国は牙城に継がせる。俺は明日から旅にでようと思う。ルウの大好きだった旅に。自分を見つめなおしてみようと思っている。それに、リクやハランたちにも会いに行かなければならないしな……」
自分は、そうか、と呟くだけだった。
「今までシルバには世話になったな。ルウのことも、何もかも……」
アレから四神たちは、自分たちが守るべき地方へと消えていった。
白虎にも会っていない。
だけど、きっと誰かを幸せにしようと努力しているはず。
そのとき風が吹いた。
暖かい春の匂いのする風が。
「壱、本当に旅にでるのか?」
「あぁ。今までありがとう。俺はルウの言っていた通りに旅をする。旅をして幸せをみつける」
「幸せって何だ?新しい女を見つけるのか?ルウのような人を」
すると、壱は顔を歪ませた。
「俺にはルウ以外の人と添い遂げることは出来ないだろう。俺にとってルウだけが愛しいから」
自分は壱を見つめた。
「だったら幸せはなんなんだ?」
「生きて、またもう一度ルウと笑って過ごせる日を手に入れること」
壱のそう言った言葉には優しさがあり、壱は微笑んでいた。
その笑顔は今までみたものの中で一番優しかった。
「もうルウは死んでしまった。この世にはいない。けれど、俺は信じているんだ。俺の側で絶対にルウは笑ってくれていると。俺は決めた。強くなることを。放すしかなかった手を、今度は放さないで守れるように。……次は彼女の強さと弱さごと守れるように」
壱は語りかけた。
まるで目の前にルウがいるかのように。
空を見上げると、白い雲が綺麗すぎて、涙が出そうだった。

