スゥーと息を吸い込んだ。
ようやく死ぬことができる。
独立の神となり、嫌になりながら生きてきたこの人生が、ようやく終わる。
私が目を閉じようとしたとき、暖かい温もりを感じた。
「……壱?」
壱が泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
壱は生きている。
暖かく温もりを感じるから。
「ごめん。ルウ。ごめん……」
ポタポタと私の頬に涙が落ちる。
その目を拭ってあげなくちゃ。
そんな顔をしないで……。
でも、私の手は動かない。
動かすこともできない。
「壱……。幸せに、いきてね……。今度は、私みたいな人じゃなくて、もっと……普通で……かわいい、女の子と、結婚して、それで、幸せになってね。壱なら、きっと……きっと……すぐに、見つけられるから」
壱が頭を大きく横に振った。
「嫌だ!俺は、ルウじゃないと、幸せではないんだよ」
あぁ、いつから壱はこんなにも甘えん坊になったのだろうか……。
昔とはまったく違う雰囲気を醸し出す壱に、少しだけ笑ってしまった。
「壱……。離してやれ。ウィンが……困っている」
シルバがグッと壱の腕を引っ張った。
壱は微動だにせずただ私を抱きしめる。
「なぁ……ルウ、このまま引き裂かれるのか?俺は、行き場のない俺に心を締め付けられる。……なぜこの時に俺たちは出会ってしまったんだろうか」
……そうだね。
壱。
何で、こんな時代に私たちは出会ってしまったのだろう。
紛争のたえない日々。
幸せな国は一つも、ない。
「壱……。揺らぐことのない強さなんてない。だから人は皆迷い、苦しむ。でも、その進んだ先に求める答えが必ず、あるんだよ」
壱は顔を歪めた。
「だが……俺は道を踏み間違えた。……暗殺者となったときと、ルウを……見放した。その結果が、コレだ。お願いだ。ルウ。生きてくれ。俺は、お前がいなければ、生きている意味がないんだ…………。ルウ、胸が苦しい……」
私は微笑を浮かべた。
壱は本当に、馬鹿だなぁ。
「あきらめるにはまだ早すぎるよ。いつか、届く夢を、静かに感じようよ。壱の決意と私の迷いの巡りあいが、道を差ししめすから、その道を信じて。旅をして、沢山の人に……出会えたなぁ……。すごく……すごく、楽しかった」
一人、一人の顔が頭によぎり、私は小さく笑ってしまった。
だけど、私の体は、寒い、冷たい、と悲鳴をあげている。
そろそろかもしれない。

