「若様!姫様が湯から出たらしいです。若様も早く入りますよ」
下からラカが声をかけてきた。
「分かったよ。今から行く」
僕はフワッとその場から飛び降りた。
スタン、と軽い音がする。
「お見事です。姫様と同じ音でしたね。まぁ、少々重い音でしたが」
ラカが小さく微笑む。
僕はそんなラカを横目に見ながら笑って言った。
「ラカは今日も笑顔だね」
すると、ラカは少し驚いた顔をして言った。
「若様も今日もずっと笑っていましたよ。姫様もね。若様と姫様は毎日笑っていらっしゃいますよね。悔しい顔とかみたことありませんよ」
僕はラカの背中をポンポンと叩いて笑いながら言った。
「あっはっはっは。何事も笑うことが大切だよね。ま、さすがの僕も狸親父には今は笑えないかな」
ラカは思った。
あぁ、背筋が凍り付いている。
「あ、は、ははは・・・。そ、そうですね。さ、さすがの若様も今回のことは許せませんよね」
僕は、もちろ~ん、とニッコリと笑った。
「当たり前じゃん。あんなブリブリの気持ち悪い女と添い遂げるとか死んでも嫌だね。死んだほうがマシだよ」
ラカは顔をひきつらせながら言った。
「ま、まぁ。確かにあれはわたくしも少々引きます」
僕は鼻で笑ってラカに向かっていった。
「自分の美貌に自信があるのか知らないけどさ。気持ち悪いぐらいに化粧ベタベタだったよ。うわぁ、僕、今すごく鳥肌たってるよ」
僕は、自分の腕をさわりながら言った。
その途端ラカの顔が完璧にひきつった顔になった。
「わ、若様……。そんなに嫌なんですか?」
僕は、大げさにこくんとうなずいた。

