太陽の竜と闇の青年

[壱]



牙城が帰った後、俺は奈落へ来ていた。


奈落は金の無くなった女が自分の体を売って生活するところだ。


だが、ここには情報通の女がいる。


合い言葉さえ知っていればそいつに会えることができる。


俺は奈落の裏口に回って、そこにいた門番に言った。


「無弐」


門番は、俺を裏口から中にいれてくれた。


中に入ったとたん、香水の臭いにおいがする。


「莢。いるか」


俺が少し低い声で聞くと、中からドスドスという重い音がして莢がでてきた。


莢は露わになっている太股にも気を使わず、俺の前にドカッと座り込んだ。


「で?今回は何が知りたいんだい?」


俺は莢を少し見下すような姿勢で聞いた。


「旅行者が来たらしいな。そいつらの特徴を教えろ」


すると、莢が俺の頬に手を伸ばしてきた。


俺はその手をさりげなく避ける。


莢は小さくため息をついて言った。


「本当に色気には興味がない男だねぇ。あたいって奈落では人気があるほうなんだけどさ。第一、あんたが気を使っている子を見てみたいよ」


「残念ながら俺はこんな奈落にいる女性よりも、もっと活発な女性が好きなんだ」


すると、莢が笑いながら言った。


「へぇ!!じゃぁ、あんた、今回運が良いじゃないかい」


俺は首をかしげながら聞いた。


「それは、どういう意味だ?」


莢はバサッと分厚い紙を俺に向かって投げてきた。


「見てみな。今回の旅行者は合わせて四人。一人は女性で、残り三人が男性。つっても、年齢はあんたぐらいだけどね。それから、服装チェックの時、牙城様がいらしたらしいよ」


俺は小さく舌打ちをした。


牙城のヤツ、いらない手を回しやがって。


「あいつは元々困っている人を放っておけないヤツなんだ」


莢は俺の顔を目を細めながら見て言った。


「それから、その女性と男性のうち一人は、双子なんだってさ。似ているって聞いてるよ。まぁ、性格はあまり似ていないらしいけどね」


双子とかあまり興味がない。


それよりも……。


「武器は何だ?」


莢は、分厚い紙をバラバラと大ざっぱに開け、あるページを指さした。


「まぁ、詳しくこれから紹介するからそう焦るんじゃないよ」


そのページには、女性にしては珍しく凛々しい顔をしていた。