太陽の竜と闇の青年

「白虎に会いには行かなかったのか?」


すると、ウィンの目が眇められた。


……いきなり怒らせたか?


しかし、ウィンはその目を伏せた。


「もう一人の私が白虎は洗脳されないとわかると、地下牢に閉じこめた。だから私はいけない」


ウィンが行けなくても、自分なら……自分ならば地下牢にいけるのだろうか。


もし、いけるのならば、今すぐにでも白虎を解放しないと危険だ。


ウィンの体はもちろんだが、こっちのウィンは精神までもがボロボロになりつつある。


「……なぜウィンは笑わないんだ?」


ウィンは真顔で自分の質問に答えた。


「もう一人の私にすべてをとられているからだよ。笑顔も涙も怒りの顔さえも」


自分はウィンの顔をみた。


無表情のウィンは、自分の知っているウィンとまったくの別人だった。


「一つ聞いてもいいか?」


自分がウィンにそう問うと、ウィンは、ご自由にとでもいうように腕を組んだ。


「空風は……空風はウィンを忘れたのか?」


そう聞いた瞬間、ビシッと音をたてて噴水の上部にある人魚にヒビが入り、そして、壁が喰われたかのようにボコッと音をたてて凹んだ。


自分が驚愕していると、ウィンは額に手をあて、顔を少しだけ隠した。


そして、自分に低い声で謝罪したのだ。


「あぁ……。ごめん。まだ力に慣れていないからさ」


自分はガタガタと少し震える体をおさえ、慎重にウィンに訪ねた。


「これから、ウィンはどうするつもりなんだ?」


ウィンは暗い目を光らせた。


「これから?」


その目が怖くて、押さえたはずの震えがまた起きた。


俺は自分でもわからないほどガタガタと震えていた。


そんなこともお構いなしにウィンは殺気をふりまいた。


ウィンは殺気を絶対に使わない人だったはずなのに。


「これからなんて私にはない。これからも、ずっと先も私は死んだままだよ。私の体はジャリスに盗られ、私の存在を知る者は二人しかいない。ずっと一緒だったフウにも、ずっと愛し合うと誓った壱にも、ずっと私の侍従であると言ってくれたサクラにもラカにも、私の存在を忘れられているのだから」


ミシミシと音がして、地面にヒビが入っているのがわかった。


やばい。


また逆鱗に触れてしまった。