「こんなにも簡単に入っちゃって、いいものなのかな?」


私が独り言のようにつぶやくと、フウが小声で言った。


「さぁね。ここが前までは鎖国していたなんて考えられないよね。警戒態勢が緩いから」


すると、牙城さんがこちらを振り返って言った。


「そんな言い方はヒドいなぁ。普段ならもっと厳重なんだよ?今日は、僕が特別に和国に入れてあげただけ。それに外国では本当はその白銀の髪ってバレたらダメなんでしょう?僕、きちんと勉強しているんだから。君たちにとっては和国は楽な国だと僕は思うよ。だって、ターバンをしていなくてもいいんだから。この国では少しだけ似ている髪をしているおじいちゃんたちがたくさんいるからね」


確かに、牙城さんの言っていることは正しい。


ターバンをしていなくても、皆、私の髪色についてはとくに驚いた様子はない。


彼らが驚いているのは、私たちが和国に入ってきたことだと思う。


っていうか、


「あの、あなたはこの国の何ですか?」


すると牙城さんはニッコリと笑って言った。


「それ、聞いちゃう?僕はこの国の王子なんだよ。牙城っていうんだ。よろしくね」


差し出された手を握ろうとした私はぐいっと後ろに引かれた。


「うわっ!」


倒れそうになった私を後ろから支えたのはリクだった。


「そう気安く手を差し出すな。こいつが本当に和国の国王だってことは分からないだろ」


牙城さんが苦笑した。


「これはこれは。他国には少し嫉妬深い人がいるもんだ。まぁ。別にいいけどね。じゃぁ、逆に聞くけど、君たちは一体何なんだい?」


これに答えたのは私たちの会話をずっと笑顔で聞いていたフウだった。