その頃…… イアル
血の海に意識が沈む。
汚れた地面にふれる頬が冷たい。
かろうじて開いた右目に映るのは真っ赤な血だまり。
見慣れてしまった光景に辟易したのもつかの間、いつもと違う異変にすぐ気付かされた。
うまく息が出来ない。
吸い込んでも吸い込んでも空気が入ってこない。
浅い呼吸を繰り返す度、喉がひゅーひゅーとなる。
苦しさに立てた爪も、酸素の行きわたらない体では力が入らない。
それでも、揺らぐ意識だけは手放すわけにはいかない、と唇を噛む。
まだ、何も終わっていない。
まだ、何も守れていない。
残された気力を振り絞って無理矢理頬を爪で引っかいた。
そうすれば火傷が燃えたように熱くなり、血が出ることを知っているからだ。
「うっ!!あっ!!っが、あぁぁぁ!!」
そして、ふいに空っぽの胃からせり上がる吐き気をぶちまければ尚更視界は赤く染まる。
それでも痛みで意識は保たれた。
これでいい。
血だまりに合わされた焦点が少しばかりくっきりと映る。
けれどまだ、呼吸は返ってこない。
息を深く吸う。
肺に酸素が沁み渡るよりも早く次の呼吸が迫ってくるような苦しい、苦しい、まるで溺れているようだった。
あがく力もなく、ずぶずぶと底無しの海に沈んでいくようだった。
せっかく輪郭を持って映し出された視界さえも再びぼんやりと霞み始めていく。
堕ちていく。
そう感じた時。
静寂に静まり返った虫床に跳ねた水音が大きく響いた。
血色のいい肌をした脚が血だまりに突っ込んだ。
「…………シェイ、おじさん…………」
何故コイツがこんなところに?
わずかな感情をろくに表せない人形のような女の子の存在は今は邪魔でしかないというのに。
睨み上げることすら出来ず、消えろと言ってやりたかったが言葉を紡ぐことさえもはや苦しい。
ただひたすら上がる呼吸と心音を耳で感じながら微動だにしない足下をじっと見つめる。
暗く湿った場所に自分の吐き出す短い空気の音だけが響く。
血の海に意識が沈む。
汚れた地面にふれる頬が冷たい。
かろうじて開いた右目に映るのは真っ赤な血だまり。
見慣れてしまった光景に辟易したのもつかの間、いつもと違う異変にすぐ気付かされた。
うまく息が出来ない。
吸い込んでも吸い込んでも空気が入ってこない。
浅い呼吸を繰り返す度、喉がひゅーひゅーとなる。
苦しさに立てた爪も、酸素の行きわたらない体では力が入らない。
それでも、揺らぐ意識だけは手放すわけにはいかない、と唇を噛む。
まだ、何も終わっていない。
まだ、何も守れていない。
残された気力を振り絞って無理矢理頬を爪で引っかいた。
そうすれば火傷が燃えたように熱くなり、血が出ることを知っているからだ。
「うっ!!あっ!!っが、あぁぁぁ!!」
そして、ふいに空っぽの胃からせり上がる吐き気をぶちまければ尚更視界は赤く染まる。
それでも痛みで意識は保たれた。
これでいい。
血だまりに合わされた焦点が少しばかりくっきりと映る。
けれどまだ、呼吸は返ってこない。
息を深く吸う。
肺に酸素が沁み渡るよりも早く次の呼吸が迫ってくるような苦しい、苦しい、まるで溺れているようだった。
あがく力もなく、ずぶずぶと底無しの海に沈んでいくようだった。
せっかく輪郭を持って映し出された視界さえも再びぼんやりと霞み始めていく。
堕ちていく。
そう感じた時。
静寂に静まり返った虫床に跳ねた水音が大きく響いた。
血色のいい肌をした脚が血だまりに突っ込んだ。
「…………シェイ、おじさん…………」
何故コイツがこんなところに?
わずかな感情をろくに表せない人形のような女の子の存在は今は邪魔でしかないというのに。
睨み上げることすら出来ず、消えろと言ってやりたかったが言葉を紡ぐことさえもはや苦しい。
ただひたすら上がる呼吸と心音を耳で感じながら微動だにしない足下をじっと見つめる。
暗く湿った場所に自分の吐き出す短い空気の音だけが響く。

